『終活』ということばはここ10年ほどである程度認知されてきました。とはいえ自分ごととして考えているかというと、まだちょっと早いかな、もう少し年齢が高くなってからでよいかなというのがおおかたの人の心理ですね。
終活は、人生の終わりを見据えてそれに備える活動だというわけですから、そんなこと早々と考えたくもないですよね。まだまだ元気に楽しみたいのですから。と私も思います。
ただ、こんなことも考えてみてください。
人生をマラソンに例えることはよくありますが、42.195キロメートルのマラソンを走る際、ゴールが明確な場合は、力の配分や給水、エナジードリンクの摂取方法など、様々な戦略を立ててレースを進めることができます。しかし、ゴールの景色が全く分からない場合、どのように走れば良いのか迷ってしまうのではないでしょうか? 最低限42.195㎞走ることがゴールだとわかるだけでもよいですが、それでも、最後の3㎞は急な登坂になるとか、風が強そうだとか、気温がが高そうだとか・・、情報はしっかりとあつめておきたいものです。
人生が、マラソンより複雑なのは、全員が同じ42.195キロメートルを走ってゴールするわけではありません。平均寿命はあるものの、自分の人生がいつ終わるかは誰にも分からず、ゴールまでの距離が不明な状態で走っているようなものです。60キロメートル走る人もいれば、30キロメートルで終わる人もいます。だからこそ、自分のゴールのときに何を備えておけばよいのか、自分や周りの人が困らないようになるのか、早めに配慮をすることが大切だと思いませんか?
わたしの周りの3つのたいせつな要素
それぞれに考えてみましょう。
ひと
家族、親戚、友人、知人、近所の方々、学校の同級生、組織で関わった人々、仕事をしていれば同僚や上司、部下、商売をしていればお客様など、人生の中で関わる人は多岐にわたります。
人生を通じて、深い関わりを持つ人もいれば、一時的な出会いの人もいます。全ての人を覚えておくことはできませんし、年齢を重ねるにつれて人間関係も自然と絞り込まれていくものです。仕事をしている時に多かった年賀状の枚数が、仕事を辞めて年を取るにつれて減っていくように、人との付き合いも本当に大切な人との貴重な時間を共有することが重要です。
もの
衣類、食料、住居(衣食住)は人の生活に必要不可欠です。
これらが最低限不自由なく満たされている状態が理想的でしょう。
身の回りには数え切れないほどの物があります。
ある整理収納アドバイザーが4人家族の家庭で物の数を数えたところ、整頓された家庭では6000点、物が多めの家庭では10000点あったそうです。さらに、家の外でも様々な物に囲まれて生活しています。
子供たちが巣立った後の夫婦の家に、幼い頃の子供たちの思い出の品が多くあるのは珍しいことではありません。かつて家族が多かった時には必要だったものも、今は二人だけの生活では不要となり、押し入れの中に静かにしまい込まれています。
物が多いことが必ずしも幸せを意味するわけではありません。管理が行き届かない物が散らかっている環境は、快適とは言い難いでしょう。
元気なうちに、ものの整理収納しておくことは、生活の質をあげることにもつながります。
おかね
私は大金持ちになった経験はありませんが、人生を通じて必要十分なものがあるのは良いことだと思います。
さらに、少しの余裕があって、海外旅行や国内旅行を楽しんだり、孫にプレゼントをすることができれば、それはさらに楽しいことでしょう。
たくさんある人は、遺産相続が円満にできるとよいですが、時として相続争いなどが生じてしまい、時には相続争いが発生し、家族関係に悪影響を及ぼすこともあります。そのため、生前にしっかりと話し合っておくことが重要ですね。
ライフプランのなかで、不足が見込まれるとき、大胆な生活の見直しをする必要があります。通信費などは、見直しの代表例です。大手キャリアではなく、格安SIMへの切り替えは効果的な節約方法です。
終活における10のテーマ
上記の通り、私たちを取り巻く3つの要素に注意を払いながら、終活における代表的な10のテーマを見ていきましょう。
1.エンディングノートを作成する
終活を始める第一歩として、エンディングノートの記入は適しています。これにより、様々な情報を整理し、新たな発見をすることが可能です。
これは自己整理であり、また、残された人々への大切な思いを伝えるためのノートでもあります。
2.親戚縁者、友人リストの作成
家族関係の整理には家系図の作成が役立ちます。両親や祖父母が元気なうちに、家系図を整理することをお勧めします。また、友人リストを作成して、大切な人々との関係を整理し、関係性を見直すことも大切です。リスト作成は、旧交を温める機会にもなり得ます。
3.ものの整理・生前整理
身の回りのものを減らし、必要なものだけで生活することは、生活の質を向上させることに繋がります。
また、アルバムや子供たちの品物など、思い出が詰まった品々は、元気なうちに整理することが望ましいです。
二人暮らしや一人暮らしになると、不要なものが増えがちです。着物、宝石、洋服などは、人に譲るか、処分することを検討しましょう。残された人にとって、それらを処分するのはとても困難だからです。
4.デジタル終活
パソコンやスマートホン内で自分のアカウントを作ったり、ネットバンク、ネット証券などを作っていて、自分以外の人が知らないケースでは、自分が亡くなったあと誰もそのデータを見ることはできなくなります。どういうサイトに、どのようなログイン情報が必要なのか、など、整理しておくことが不可欠です。デジタル時代になり、非常に重要な課題です。
5.住まいについて考える
足腰がわるくなり二階へあがるのがむずかしくなった。段差があって躓き転倒のリスクがある。車がなければ買い物も病院もいけない。など、高齢者にとって住まいをどうするかは大切なポイントです。住み慣れた家だから改造してバリアフリーにしたり、思いきって手放し、コンパクトに利便のよいところに引っ越ししたり、あるいは、子供と同居を検討したり、さまざまなことを考えましょう。高齢になってからでは、荷が重すぎて、思いがあっても実際に動けないという事態になる前に、元気なうちに検討しましょう。
6.医療・介護について希望をきめる
将来、どのような病気にかかり、介護が必要になるかは予測できません。
しかし、もし突然の事態が起こった場合、そのとき判断力が低下している可能性があります。病気の告知をうけたいかどうか、延命治療を受けるかどうか、介護施設での生活を望むか、家族に介護を依頼するかなど、元気なうちに家族と話し合っておくことは重要です。一度決めたことでも、状況が変われば計画通りに進まないこともあります。家族が集まる機会に、年に一度はこれらの話をする習慣を持つことを推奨します。
7.葬式・墓の希望をきめる
コロナウイルスの影響で葬式の形式が大きく変わりました。家族葬のような少人数で行う葬儀が増えています。自分の葬儀や墓に関する希望を事前に伝えておくことで、急な事態に際して喪主が慌てることを避けられます。
また、遺影写真は自分が気に入ったものをさきに選んでおくと良いでしょう。
8.財産の総点検と老後資金の計画をたてる
銀行口座、債権、不動産などの資産を整理することが重要です。自分の資産を全体的に点検し、年金などの収入と毎月の支出を記録して、老後の資金計画を立てましょう。収入が支出を上回っていない場合は、保有資産を活用しながら生活できるかどうかを判断することが重要です。
9.相続を想定して遺言書の作成
相続資産がある場合、現金や預貯金は法定相続人に定められた割合で分けやすいですが、家、不動産、株式、仮想通貨などが含まれると、その比率通りに分割が困難になることがあります。混乱を避けるためにも、遺言書の作成をお勧めします。
エンディングノートは法的効力を持たないため、遺言として正式に残す必要があります。
10.人生でやりたいこと10選(100選)作成と取り組み
これは、一番最初にしてほしいことでもあります。
自身の希望を叶えるためのウィッシュリストは、夢を描き、それにむけた努力を促す活力剤でもあります。若いときであれば、100個、定年後くらいであれば、10個、書き出してみましょう。海外旅行に行きたい。家をつくりたい。子供は3人以上もちたい。会社をつくってみたい。など、自分の人生を充実したものとなるよう希望をかき、取り組んでいきましょう。
いかがでしたでしょうか?
終活は、人生の終わりに近づいた時に始めるものではなく、
終わりが近づいたときには何をすべきかをあらかじめ知り、
若いうちから少しずつ準備をしていくものだとおわかりいただけたでしょうか?
終活アドバイザーとして、皆さまの終活をサポートする水先案内人でありたいと思います。
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